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1998.05

ウインドウの最大化

デザインチームというものは、製品を成功させるために、いかなる長さまたは深さに備えていなければならない。普通そのためには1-2度の手直しで済むのだが、Healtheon(オンラインでの総合ヘルスケアサービスを提供する企業。Tognazzini 氏が所属していた。)の Benefit Central サイトの構築においては、たった1ページのシンプルな画面のために、大きく分けて7回もの反復デザインが行われた。

背景

Healtheon/WebMD 社の Benefit Central サイトでは、従業員が通常のウェブブラウザ経由で医療保険や生命保険などを選択し申し込むことができるというサービスを提供している。

ユーザの多くは、1年に1度程しかこのサイトを訪れない。Benefit Central は、1度だけの利用で十分に理解できるようにデザインされる必要があった。

我々デザイナーは暗黙のうちに、2つの前提に立ってこの新しいプロジェクトに臨んだ。しかしそのどちらも間違っていたのだが:まず、我々のユーザのほとんどを占めるウェブ初心者たちは、アプリケーションの使用に慣れていなかった。次に、ユーザは各サービスや複雑なアカウントの違いについて理解できなかった。

我々は、アプリケーションの始めにおけるこの問題に対して、どうすればよいのか分からなかった。

我々は、テストする課題として選んだ項目から、ユーザを3種類に分類した:ウェブ初心者(これまでのウェブの経験がトータルで2から10時間の者)、上級者(週に最低20時間以上ウェブを利用している者)、そしてその間に位置する者である。我々のゴールは、このアプリケーションが初心者でも安心して使えるように補助しつつも、上級者にとって厚かましくないようにすることだった。

多すぎる選択肢

問題点

初期状態のブラウザのウインドウは、少なくとも100以上の異なる操作をユーザに提供しており、目移りしてしまう。初期のシンプルなブラウザと違い、立派なアプリケーションに発達した最近のブラウザは、非常に複雑で破壊的になってしまった。

複雑なブラウザウインドウ

これらに含まれる要素:

最も深刻な問題は、これらのオプションが、ユーザが入力した情報をユーザにもアプリケーションにも警告せずに消去してしまうことがあるということである。そしてそれらは、突然スクリーンからウインドウを消してしまったり、いつのまにか他のウインドウの後ろ側に隠してしまったりする。そうなった場合、前の状態に戻すことは非常に困難である。

ユーザの情報を警告なしに消去するオプション:

ユーザのウインドウを突然隠してしまうオプション:

我々はこれらの“魅力的な迷惑”をどうにか無効にして、ユーザを適切なサービスに誘導しなければならなかった。

提案されたソリューション

現在のウインドウ内にすでに表示されているオプションをオフにすることはできないため、すべてのオプションをオフにした新しいウインドウを開くようにする。そうすればユーザの目にするオプションを我々がコントロールすることができる。

メンバーサービスのオープニング画面の最初のプロトタイプ

取り組み

新規ウインドウはユーザのデスクトップ上で開かれ、メンバーサービスの最初の画面が表示された。

新規ウインドウ

問題の解決

メニュー、ツールバーのボタン、ディレクトリのボタン、そして封筒アイコンはすべてウインドウから消えた。ユーザはもう間違ったボタンを押すことはない。なぜなら存在しないのだから。

問題の出現

新規ウインドウはランダムな位置に気まぐれなサイズで開く。これを、ユーザの手でフルスクリーンのサイズにしてもらわなければいけない。

この説明文はまったく意味がなかった。初心者は、この説明からタイトルバーとは何なのかを理解できなかった。

画像化されたタイトルバー

取り組み

タイトルバーが何なのか分からないのなら、見せてやればいい!

画像かされたタイトルバー

新しい問題

彼らはタイトルバーを見つけた。あるいは見つけたと思った。かなりのパーセントでユーザは、本物のタイトルバーではなくその画像の方をダブルクリックしようとした。振り出しに戻る。

タイトルバーを明確に

取り組み

タイトルバー自体の中に、それをどうすべきか説明した。この方法なら、ユーザは二カ所の注目点を行き来する必要が無い。まずページ内の説明分がタイトルバーの見つけ方を説明し、次にタイトルバー自身がその先を引き継ぐ。タイトルバー内に書かれた普通でない言葉(ここをダブルクリックしてください!)も、ユーザの注意を引くのを助けている。

タイトルバーを明確に

解決された問題

初心者は、ウインドウの最大化に成功した!

問題の出現

上級者は違った。

上級者は説明文を無視して、下部の「Next」ボタンが見えるようにスクロールすると、小さなウインドウのままこのページを去っていった。その後の12分間、彼らはページ内容のほとんどが表示しきれない状態でアプリケーションを使用した。

スクロールバーはいらない

取り組み

スクロールバーを取り除いた。

消去されたスクロールバー

解決された問題

これで初心者と上級者の両方がウインドウを広げてくれた。

出現した問題

上級者は不満だった。彼らは、くどい説明文を嫌った。うまくいきはしたが、満足は得られなかったのだ。

「何を」と「どうやって」を分ける

上級者たちは、アプリケーションを通してすぐに“その他の問題”を発覚させた。彼らは、初心者と同じぐらい多くの、そしてほとんどの場合、同じ問題を抱えていた。上級者の場合、それは知識の欠如によるものでなく、忍耐力の欠如によるものだった。彼らは可能な限り何も読まず、どんな説明にも従わなかった。彼らは“近道”を求め、5分でできるはずの登録作業を、あちこち飛び回りながら30分もかけて完了した。

それにもかかわらず、我々はこの手に負えない者たちに対してある種の親近感を覚えた。なぜなら我々も上級者の仲間だからだ。そこで、彼ら(我々)が退屈な文章を見ないでもすむようにした。

取り組み

我々は、やるべきことの説明と、それをどうやってやるかの説明とを分離した。

説明の分割

解決された問題

初心者に必要な情報を提供しながら、上級者を非常に満足させることができた。我々の仕事は終わった。… と思った。

ウインドウの悪戯

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新規ウインドウ?それとも古いウインドウ?

おかしなことになってきたようだ。この試行を通して、ついに我々は初心者から上級者までのすべてのユーザを得たと思った。しかし突然、小さな、しかし確かに少数の者が何度も繰り返す問題を発見した。彼らはまずウインドウを最大化する。そして、またそれを縮めてしまう。そしてまた最大化する。そしてまた縮める。

ウインドウが小さい状態から最大化される時、それはズームのアニメーションを伴わない。そのかわり、ウインドウが完全に消えて、新しい大きなウインドウに取って代わるように見える。この時、何が起きているのかということについての二つのメンタルモデルが考えられる:

後者の場合、ユーザはこうするのだ:彼らにとっての新しいページに書かれた説明に従おうとする。そしてタイトルバーをダブルクリックする。

残念なことに、これはどうしようもない。ウインドウが正しいサイズに変更されたというイベントをアプリケーションが受け取れなければ、我々はウインドウについてどうすることもできない。

絶えない不満

私が最初にこのウインドウの“悪戯”についての報告を聞いたとき、私はもうやるだけのことはやったのだと思っていた。何か不思議な力が彼らを奇妙な儀式へと誘うのだ。私は、この少数(15から20%以下)の人たちが3-4分の間ひたすらタイトルバーをダブルクリックするということへの対処を放棄しようと思った。

しかしながら、このテストを行っていたユーザビリティのプロである Kivilcim Boztepe は、これを放棄しなかった。彼女は何度も彼らについて報告した。私は忙しいスケジュールの合間に何度も彼女の前に座り、あらゆる人々についていちいち報告することの無益さを説明した。しかし彼女は私の言葉を完全に無視したのだ! 次のレポートには、「テスト被験者43番は8分37秒間ウインドウを拡大縮小して、やっと次のページに移動した。」と書かれていた。

2ヶ月におよぶ Kivilcim の説教の末、私はついにひとつのアイデアを思いついた。それがうまくいくかどうかは分からなかったが、Kivilcim を私の背後から立ち去らせるためなら何でもしようと思った。こうして、Parker は誕生した。

プレーリードッグの Parker

取り組み

人間の視覚機能は、周辺部分の動体を敏感に捉えるようにできている。そのため、ライオンや虎や熊に食べられずにすむのだ。この現象を理由に、ソフトウェアデザインにおいては周辺部分におけるアニメーションを通常避けるように言われている。しかしここでは、それをうまく使ったのである。

Seven top
Seven left Prairie Dog Seven right
Seven bottom

我々はページの下部にアニメーションで動くプレーリードッグを追加した。それを、ウインドウを最大化しなければ見えないように配置した。彼が見えると、Parker はユーザの視線を彼のメッセージに導き、ページを移動する準備ができたことをユーザに知らせるのだ。

結果

何人かのユーザはまだ拡大縮小を繰り返した。だがその人数は非常に小さなものとなった。Parker の努力をもってしても、彼らの拡大縮小は止められなかった。

放任されたプレーリードッグ

問題

我々は被験者に対してできるだけ丁寧な口調で質問した ─ なぜあなたはそんなに愚かなのですか? だがそうではなかったのだ。彼らは小学校一年生の時の先生の教えを忠実に守っていたのだ。「先生のやることをよく見ていなさい」。そして今回の場合に当てはめてみると、「そうです、ページの下の方に何かとても興味深いものがありますね、だけどあなたはまだそれを見てはいけません。その前にまず一番上のところを読まなければいけません」。それで Parker は無視されるのだ。彼らは「ステップ1:タイトルバーを見つけて...」を読み、同じプロセスを何度も繰り返すのだ。

Eight top
Eight left Prairie Dog Eight right
Eight bottom

ソリューション

我々は一番上に、「もしプレーリードッグが見えたら...」というメッセージを追加し、この少数の人たちがページ下部に目をやるようにした。そしてついにウインドウの悪戯は永久に消滅した。

嵐の後

嵐は三日後に来た。我々がついにこのデザインを成功させた三日後、Netscape は “新規ウインドウのサイズと位置を自由に指定できる”Netscape 4.0 を発表した。簡単にウインドウを最大化させることができてしまうのだ。

だが我々の苦労は無駄になったわけではない。我々のクライアントのすべてが新しいブラウザに移行するまでには1-2年かかるだろう。我々の努力の効力が無効になるまでには、少なくともあと1年はかかるということだ。


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