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AskTog
1998.07.20

「直観的」と「親しみやすさ」

Dear Tog,

私は、コンピュータを始めてわずか2ヶ月の間にアプリケーションやマクロを書くまでに詳しくなった人たちを知っています。一方、いつまでも最初の段階で立ち往生してなかなかコンピュータをうまく扱えない人たちも知っています。いったいなぜ、同じような教育を受けた人たちの間で、ひとたびコンピュータのことになるとこんなに差が出てしまうのでしょうか。

私が思うに、それには主に二つの理由があります:

  1. オペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアの GUI は、一般的に初心者のユーザにとっては「直観的」ではない。
  2. すべての習熟プロセスにおいて、その動機付けとなる要因が成功のための鍵である。

ユーザインターフェイスのデザインにおいて「直観的」という言葉は、私の意見では、最も危険で誤解を招きやすい言葉だと思います。なぜならその言葉は、ソフトウェアのあらゆる部分のあらゆる機能を誰でも「苦労せずに」使うことができるという期待を生み出すからです。実際はそうではありません。ユーザはまず基礎を成すメタファとそのオブジェクトについて、関係性や限界を理解しなければなりません。次にインタラクションの手法について学びます:マウスの動かし方、ダブルクリック、ドラッグ&ドロップなど。そして、そのソフトウェアでタスクが遂行できるかどうかを確かめ、考えを行動に移すといった、作業手順の組み立てができるようにならなければいけません。さらに、行動した結果が作り出すアウトプットについての解釈を忘れてはいけません... 特にエラーの回復方法などです。

もちろん、これだけではありません。私が指摘したい点は、1998年の今でも、ユーザがコンピュータとうまくやりとりして目的を達成するためには、とても多くのことを学習しなければならないということです。一般に初心者ユーザの態度はそれほど大きく変化していません。操作をうまく自分のものにしていろいろなことを自由に試してみることができる人たちと、コンピュータに対していつまでも臆病で心配ばかりしている人たちの混合なのです。後者の人たちは、インタラクションの方法を様々なアプリケーションに適用可能な一般法則として理解することができず、特定のソフトウェアについての限られた操作方法に捕らわれてそこから発展することができないのです。私の知っているある人は、ソフトウェアの操作方法を説明した「料理レシピ」を何冊も持っています。その内の三冊を見てみると、Word、Excel、そして PowerPoint におけるファイルの開き方を説明していました。Word と Excel では「ファイル... 開く」メニューを使いますが、PowerPoint の解説本には、ツールバーにある「ファイルを開く」ボタンを使うように書いてあります。彼は PowerPoint でもメニューにある「ファイル... 開く」を使えば Word や Excel と同じことができるということを知りませんでした。

私は、ソフトウェアの中を自由に探検できるようにすることが初心者にとって重要なのだと思います。そのため、ユーザインターフェイスデザイナーやソフトウェアエンジニアは、ユーザの様々な行動を容認するインターフェイスガイドラインを作ることが大切だと思います:つまりエラーに寛容であるべきだということです。そうすることによってユーザは自分で自由に操作できるのだと感じるようになりますし、「いつもの決まった操作」を超えてもっといろいろなことに挑戦しようという気持ちになるはずです。人々は、彼らが望むようにより高度なことができるようになるのです。

Greetings and best wishes,

Jens

Jens Nagel
Human Factors Engineer
Mannesmann Autocom
Duesseldorf, Germany.


エンジニアがエラーに寛容でないソフトウェアを作っているという意見には同意できない。「古き悪き時代」にくらべれば、今日の GUI ソフトウェアは非常に寛容である。だがウェブではうまくいっていない。これは今日の原始的なブラウザテクノロジーに多くの原因があり、デザイナーやエンジニアの能力や考え方のせいではない。

「直観的」なインターフェイスという神話については、しかしながら、私はもっと同意できない。「直観的」という言葉は二重に間違って使われている。まず、ソフトウェアというものはそもそも直観的ではない。たいていは「いくらか直観で使える」という程度であり、場合によってはまったくできない。Macintosh の父と言われる Jef Raskin は彼の文章「Intuitive Equals Familiar」(Communications of the ACM. 37:9, September 1994, pg. 17.)の中でこう述べている:人々が「直観的」と言うとき、それは大抵「親しみやすい」ことを意味しているのだ、と。

親しみやすさもまた難しい。例えばアイコンをデザインする時、私はいつもそれを瞬間的に認識できるようにする -- 親しみやすくする -- のに苦労する。そしてそれが記憶しやすいといったところにまで到達した段階で満足するようにしている。そう、一番最初は、そのアイコンが何を意味しているのかについて、ツールティップやその他の方法で説明する必要があるのだ。もしそこでその意味を覚えてもらえれば、それは成功と言える。

数が増えたらどうだろうか? もしひとつのソフトウェアに1400個のアイコンと1200個のプルダウンメニューと8700個のダイアログがあったら、もうどうしようもない。親しみやすくしたり、記憶しやすくしたりすることなど無理だ。

答えは、いくつかの明快な、そして強力なコンセプトを作り出すことにある。親しみやすく分かりやすいメタファーを採用するのである。そして最も重要なのは、そのメタファーをうまく教えることだ。

Bill Atkinson が Apple で HyperCard を開発していた時、彼は私たちに、スクリーン上でオブジェクト同士がいかに並べられ、結合されるかを一生懸命説明した。だが私たちにはそれがどういったことなのかよく理解できなかった。すると彼は絵に描いてみせた。それはレイヤー構造のシステムで、積み重なったカードのように見たり操作したりできるものであった。その絵を見た者は、ほんの数秒で、とても抽象的な HyperCard の概念を理解することができ、学習経験のバランスを通して何ができるのかを予測することができたのである。

つまりこういうことだ:コンセプトの理解というものは、脳の中の理知的な機能ではないということ。コンセプトは生まれ出るものであり、直観性を通して捉えるものなのだ。そういったものが感覚の上では、Jef Raskin が言うように、言葉を超えた直観的なインターフェイスとして認知されるのである。良いメタファーはデザイナーの感覚の中から生まれ出る。プログラムの見た目や振る舞いのデザインを通してそれが効果的に伝達される時、ユーザの中でデザイナーの意図した操作概念が再構築されるのである。

すぐに学習できるソフトウェアのためのガイドライン:

  1. できるだけ親しみやすくする。
  2. 覚えやすくする。
  3. 操作概念は単純なものにする。
  4. それらのコンセプトを一つか二つの強力なメタファーを使って伝達する。
  5. プロトタイプをテストして人々が「ものにする」かどうか確かめる。
  6. うまくいかなければ、アイデアを伝えるために、デザインや、シンプルなイラストなどの開発を補助する材料を修正してみる。

これらをすべて行ったら、残る心配は次のリリースのことだけだ。ソフトウェアが成熟するとよく無数の新しい機能が追加されていくが、それでは尖ったフジツボのようなごたまぜの塊になってしまう。

Microsoft Word のインターフェイスはその複雑な機能と同時にその歴史を反映している。新しく追加された機能は、一つの統合された操作環境としてではなく、分離したモードとして現れる。Adobe Photoshop はいくつもの時代に追加されたオブジェクトのためのコンセプトを必要としている。しかし基本的なコンセプトに合致したのはレイヤー機能だけで、古くからの Photoshop ユーザの多くは、彼らの画像を台無しにしてしまった。これは開発者の失敗ではない。今日のシステムでは、その基礎的な部分からメタファーとデザインを切り離すのが難しく、なかなか新しい機能を追加するためにインターフェイスを整えることができないのだ。次の10年で重要になるのは、どうやってそれを成し遂げるかだろう。


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