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2000.09 |
─ ウェブデザインに妥協はゆるされない ─
あなたの仲間である4人の開発チームメンバー。能力の限りを尽くして特定の仕事に励む彼らは、インタラクションデザインに対するあなたの努力を台無しにするかもしれない。彼らがそうしないように見張っているのがインタラクションデザイナーの仕事である。(もしあなたがインタラクションデザイナーでなくても、とにかく読み進めて欲しい;あなたはあなた自身も問題の一部なのだということに驚くだろう。)
このメタファーは、ドラッグやアルコール依存から立ち直った人々が家庭崩壊の現象について表現するのに用いられる。母親は意味もなく泣きわめき、息子は学校で不良になり、娘は食べ物を一時も離すことができない。父親は、朝目覚ましが鳴るとすぐに酒を飲み始め、何時間も家族を叱りとばすが無視され、やがて夜になってソファで酔いつぶれる。父親の“小さな問題”については誰も相手にせず、まるで置物のように、その存在すら気づかれなくなる。こうまでなってしまったら、一体どうすればよいのだろうか?
私がこれまで検証してきたウェブサイトの多くは象で埋め尽くされていた。飲んだくれの父親のようなひどい象。ユーザエクスペリエンスを踏みつぶして殺してしまう象。それは結果的に数百万ドルという収益を失うことに繋がっている。私と話すインタラクションデザイナーたちは、私が彼らの困難な立場に同情するのを期待するようだが、彼らに何ができるのかを考えた方がよい。私の答えはシンプルだ。仕事がやりにくいのなら、ひとつひとつ問題を解決するしかない。
問題に直面している人々を象呼ばわりするのはフェアじゃないかもしれない。実際彼らは与えられた仕事を確実に遂行しているのだ。(場合によっては完璧すぎるほどだ。)これらの悪意のない調教師たちと、彼らのすばらしい灰色の動物について見てみよう。
エンジニアは、当然、成功するサイトの生命である。しかし彼らの提供する力は、デザイナーの努力を損なうような逆方向にも同時に働いている。
私はデザインによく精通したエンジニアと仕事をしたことがある。彼はまるで天地を動かすように、他のチームメンバーが考えてきたことを絶妙に実装してみせた。もっとすごいエンジニアもいて、誰もが実装不可能だと思っていたクールなアイデアを一晩でプロトタイプにまで仕上げてしまうというのだ。こういった人たちには全く脱帽する。
ほとんどのエンジニアはそこまではできず、最低限の要求を満たし、部分的にデバッグしたコードをサーバにアップロードすることで“仕事を終わらせる”だけだ。
(エンジニアの三番目の嘘はもちろん、あとでデバッグしておくよ、である。エンジニアの生き方は難しい。)
優れたエンジニアはあなたのデザインが実装不可能であることを上手に説明してくれる。しかし次の日には傑出したコーディングによって如何にしてその不可能を可能にしたのかを見せてくれるのである。(ほら見てくれよ、ちゃんと動作するだろ!)世の中にはそんなことは試してみようともしないエンジニアもいるというのに。
厄介なユーザインターフェイスをまかされたエンジニアがいたら、彼や彼女とまず組んでみるとよい。Adobe の GoLive などのツールを使ってプロトタイプを試してみる。すると鉛筆やスケッチや身振り手振りでは分からないことを伝えることができる。日に一度または週に一度はエンジニアと膝を交え、不安材料についてひとつひとつ話そう。なぜ彼らの書いたコードによって線が1ピクセル低すぎるのかといったことについてよく聞いてみよう。そしてそれがあなたにとって非常に重要なのだということを理解してもらうのだ。
このやり方でうまくいかなければ、管理体制の鎖をゆっくりと上る。エンジニアリングのマネジメントに責任があるのなら、マーケティング部の人間と連携して、マーケティングマネジメントの立場から進言してもらうとよい。
またいつものように、きちんと文書にまとめたユーザテストによってあなたの地位は堅強になるだろう。
「Maximum Security」で書いたように、セキュリティの担当者というものは人を招くことよりも遠ざけることに熱心だ。彼らに我々の考えを理解させるのは非常に困難である。彼らは入ってこようとするものを徹底的に拒もうとする。
そんな時には実地調査の統計的な結果を見せて、週毎にかわる128文字のパスワードによって A)ユーザは二度とそのサイトに近寄らない B)パスワードを紙に書いてモニターに貼り付けて(うわ!)世界中の人に見えるようにしてしまうのだということを教えてあげよう。
人によっては“秘密の鍵”であるパブリックキーによってセキュリティの担当者を欺こうとするかもしれない。だがこれはよい方法とは言えない。まず、セキュリティの担当者は誰にその責任があるのかをすぐ見つけてしまう。次にセキュリティ担当者は悪気があるわけではなく単に教えられた仕事をやっているにすぎないからだ。(真の問題は彼らの指導者が間抜けだということである。)だから彼らに現実世界のセキュリティがどういうものかを教えてあげなければならない。もちろん、彼らが聞く耳を持たないようであれば、もっと強く、実際のデータを見せて説得するのである。
法律家もまた間抜けな教育を受けている。なぜ彼らは使用許諾文、警告文、威嚇文によってユーザビリティを低下させ、単にサイトを利用しようとしているだけの不幸なユーザにキーボードから440ボルトの電流を流すような特殊な Java 機能を追加するのだろうか。
法律家は他の調教師たちにくらべてもっと効果的かつ十分にサイトを強化できるはずである。彼らには神(あるいは彼らが報告する相手である誰か)がついているのだから。彼らの仕事はあなたの会社が訴えらるのを防ぐことである。そうか、そのサイトで誰も何もできないようにすれば、訴えられる心配もなくなるのか!
私の経験から言って、法律家との議論は白イタチについての討論よりも退屈である。あなたは法律家ではない(つまり完璧な人間ではない)のだから。もしあなたの会社の法律家がラテン語の使用や大文字アルファベットの多用によってユーザビリティを下げているなら、ユーザテスト、調査、アクセスログを使ってその悪影響を証明しよう。それがだめならまたその上のマネジメントの手を借りるのである。一番上の人間は底辺のことを理解してくれることがある。彼らならできる。きっとやってくれるだろう。
私の読者そして私の友人の多くはグラフィックデザイナーである。だからここは軽く済まそうと思う。しかし私は、グラフィックデザイナーが不当に強すぎる力をもたされているということを指摘したい。Apple の Mac OS X を見ればその効果が分かるだろう。
グラフィックデザイナーは、私から見れば、実体を作るという魔法の力を持っている。しかし、彼らの指導者もまた、インタラクションの技術などについては知識や興味を持たない間抜けなのである。インタラクションデザイナーとグラフィックデザイナーとのバランスが崩れれば、とても美しいが全然使えないサイトが出来上がってしまうであろう。
私の経験では、そういったバランスの欠如の責任がグラフィックデザイナーにあることは希である。それよりも、マネジメントやマーケティングの中に残る出版業界の古い価値観がそうさせているのだ。あるいは、10年前の印刷メディアの影響を引きずる、クリーム色の背景上の2ポイントの黄色い文字のようなカッコツケのグラフィック効果を愛してしまっているのだ。
あなたの仕事は、この不要な生き物を見つけ、彼女をおとなしくさせることである。セキュリティ担当者に彼女の不正を報告すればダブルプレーができる。そうでなければ、アクセスログを見せてサイトに訪れるユーザが何も悪さをしていないことを証明するのだ。これらの解析記録はユーザテストと共に保存しておこう。
現存するインターフェイスの問題をあなたが何とかできるものとできないものとに分けて考えているのであれば、もう変えるべき時だろう。すべてのユーザビリティに関する問題はあなたの責任である。そしてあなたはそれをきちんと指摘する責任がある。しっかり目を見開いて象が見えたなら、ユーザビリティの調査という大きな銃を手にしてやっつけに行こう。戦いは慎重に選ぶこと。そうすれば成功する。冷静に行動すれば、あなたはヒーローになるだろう。
もちろん、離れたところからただ見ているのを続けることもできる。問題は時間と共に意識されなくなっていく。使いにくいサイトはすでにハエのように落下しはじめているが、経済的な下降はまだ起きていない。そしてやがて会社全体がクビになり、みんなが困り果てるのだ。
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