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2001.06 |
どんなに素晴らしい提案であっても、そこに非難や中傷があれば受け入れられない。先日私はある会社に提出されたレポートのコピーを受け取ったが、それは評価者の努力があまり感じられないものだった。我々はそこからいくつかの教訓を得ることができるだろう。
Dear Tog,
私はこの分野についてもっと学びたいと思い、学生として User Experience World Tour カンファレンスに参加しました。 そこで私は直接 Jakob Nielsen 氏と話し、将来ユーザビリティのコンサルタントとして働くために残りの学生生活をどのように過ごせばよいのか聞いてみました。Nielsen 氏は「経験こそが最高のトレーニングだ」と私に言いました。彼は、とにかく外の世界に出て「ユーザビリティしろ」と私を励ましてくれました。
このことに啓発された私は、すぐに自分自身でユーザビリティの検証を行ってみました。多くのデザインはあまりにひどいため、まず私は近くのユーザビリティコンサルティング会社のウェブサイトを検証してみることにしました。おそらくユーザビリティの会社である彼らのデザインから問題点を見つけだすことは難しいだろうから、よい練習になると思ったのです。
私は検証結果をその会社に送りました。しかし残念なことに、彼らはその内容を認めようとしなかったのです。
あなたもこの分野の専門家であり、Nielsen 氏と一緒に仕事をしていますし、ウェブサイトでは読者からの意見を募っています。だからもしかしたら、私の短いレポートを見て何かコメントしていただけるのではないかと思いこれを送りました。
[ここに署名]
上記で触れられているレポートの形式にしたがって返事を書くとすればこうなる:
[ここに名前]さん
私には君のレポートをタダで見てあげる時間などありません。
だけど君のレポートの出来があまりにもひどいので今回は特別に見てあげました。
君はまだ始めたばかりだというので、せいぜい数カ所の間違いがあるのだろうと思って見てみましたが、もうこれはひどすぎてまったく話になりません。
ショックかい? どんなふうに感じる? この後何が書いてあるのか積極的に読みたいと思うかい? まさか。私はちょっと顔をぴしゃりとしてみたのである。さあ、もう一度やってみよう:
[ここに名前]さん
申し訳ないのですが、時間がなくてあなたのレポートをざっと見ることしかできません。あなたの分析のクォリティについては、とても良いと思います。標準的なユーザインターフェイスの原則から外れる問題点を、十分な説明と共に指摘しています。それでもこのウェブサイトを制作したユーザビリティの会社は、その間違いを認めないのですね。それはたぶん評価内容のせいではなく、提示方法のせいではないでしょうか。今回の原因について私の考え方をいくつかお教えしますので、それを参考にしてみてください。そうすれば将来クライアントと良い関係が築けるようになるでしょう。
今度はだいぶマシな気分だろう?
ではあなたが今回のクライアントであるこのユーザビリティコンサルティング会社をどんな気分にさせたのか考えてみよう。そして次回にどうすれば同じ問題がおきないようにできるのかを考えよう。
では、最初の段落から見てみよう:
このレポートは www.[サイト名].com における五つの深刻なデザイン上の欠点を明らかにするものです。すべての欠点は一般に公開されている企業あるいは教育機関の HCI に関する文献に解説されています。それらの多くは、今週行われている User Experience World Tour の講師たちによって書かれたものです。
これでは人と親しくなったり影響を及ぼしたりすることはできない。あなたの書き方ではこんなふうに聞こえる:
あんたらは本当に間抜けだ。あんたらは自分たちのことをユーザビリティの会社だと言っているが、どうやらその手の本の一冊も読んだことがないようだね。なんて哀れな!
これでは読む気がしなくなるだろう。
今日から後、死ぬまでの間、製品やサービスについてのレポートを書く時は必ず何か誉めることから始めること。そうすればビジネスに繋がる。
例えそのサイトが気に入らなくても、こんなふうに書き始めよう:
現在のウェブサイトは見た目も良く、様々なスクリーンサイズに対応し、グラフィックはきれいで明快です。以下の提案はそれらの長所をより活かすためのものです。この提案によって、新規クライアントや既存クライアントからのより多くの援助を獲得することができるでしょう。
誉め言葉を書くだけでなく、アドバイスを受け入れればどのような利点があるのかを説明しよう。
利点は重要だ。営業においてはこれを最初に教わる。車を買う人に対して単に「独立したフロントサスペンションを搭載しています。」とは言わない。「そのためハンドル操作がしっかりとできるのです。向こうで売っている安物とは違うのですよ。」という言葉が必要だ。
以下はあなたのレポートに使われていた見出しだ:
これでは人と親しくなったり影響を与えたりすることはできない。
同じ情報でも以下のような見出しにすることができる:
ざっと見てそれが、今までやってきたことをより改善してくれそうであれば、彼らはその書類に興味を持つだろう。逆にこれまでの成果を否定するものであればもう見たくない。
ユーザビリティ評価レポートの場合、デザイナーはあなたの考えたアイデアではなく、単に結果に興味があるのだ。以下のようにすれば批評的な要素を含まずに済む:
次にこのレポートの典型的な部分について見てみよう:
間違い3 - ハイパーリンク・ブルース
ブルーはおそらくウェブで最も特徴的な色です。ページ内に青くて下線のついた文字列があれば、ユーザはそこに引き寄せられ、クリックしようとするでしょう。なぜなら、青くて下線のついた文字列はハイパーリンクであるという多くの経験が彼らにはあるのです。あなたたちのウェブサイトは、このインターネットにおいておなじみの、最も強力で伝統的なインターフェイス要素をうまく利用していません。
専門家もこのことについては同意しています。Jakob Nielsen によれば、青という色は常にリンクをあらわすので、その他のいかなるものにも使ってはいけないということです。Nielsen は 1996 年以降、標準的でないリンク色は「深刻な」問題を引き起こす、と分類しています。(参照:http://www.useit.com/alertbox/990502.html)
あなたたちのウェブサイトにおけるハイパーリンクは、標準的な色を使っていないというだけでなく、サイト内のその他の非標準的なインターフェイスデザインによって混乱を更に増長させています。良いデザインのためには、サイトのナビゲーション全体に渡って統一されたインターフェイス要素を用いる必要があります。そして定められたガイドラインにそって製品のインターフェイスに一貫性を持たせるのです。
問題点の指摘や改善案に入る前に、私はいつもターゲットのユーザについて書くことにしている。ウェブサイトの場合、それは初めて訪れる人々なのか? それとも熟練者なのか? あるいはその間に位置する人々だろうか?
ユーザはこれから見ようとするコンテンツについて理解しているだろうか? 例えば、そのウェブサイトが一戸建て所有者向け保険の選択について扱っているとすれば、そのサイトのターゲットは一戸建て所有者だろうか、それとも保険会社だろうか?
ユーザのことを理解して初めてその製品やサービスを評価することができる。それをきちんと伝えることで初めてクライアントとその解釈を共有することができる。
レポートの中には予測されるユーザ数の話が出てくるが、そこには何の説明もない。評価者の考え方という文脈が欠落しているのだ。
事情も知らずにクライアントを見下した態度で指示を出すようなことはしてはならない。今回の場合、クライアントはユーザビリティのコンサルティング会社だ。彼らが青い下線つき文字列の原則について知らなかったという可能性はゼロだろう。それなのにわざわざその説明をするのは失礼だ。
本文では悪い点を指摘しなければならないが、だからといって相手を平手打ちしてよいというわけではない。だから議論はこんなふうに始めるといいだろう「このサイトではすべてのクリック可能なリンクテキストに下線が付いています。またクリックできない箇所に下線を使ううということを一切していません。しかし多くの専門家が主張するように、リンクテキストに青い色を用いるようにすれば、下線付きスタイルの利点をより増幅することができるでしょう。」
この例文では、改善点に触れる前にまずサイト内における二つの長所について書いている。この後に続く五つの段落では多くの問題点について言及していくことになるが、最初に長所を書いているため、彼らは好意的に読み進めてくれるだろう。
Jakob Nielsen、Don Norman、そして私は、これまでたくさんのサイトを評価してきたし、多くの提案も行ってきた。ただし我々は互いにこの手の仕事を本当に長年やってきているのだ。我々はそれら提案内容の妥当性が厳正なユーザテストによって証明されるのを見てきている。我々はうまくいった点やいかなかった点から多くを学び、その経験を身体に染み込ませている。またどんな時に「それは分かりません」と言うべきかも分かっている。「だからユーザテストをする必要があります」と。
もしあなたがこの仕事を始めたばかりであれば、自分にはまだ知らないことがたくさんあるのだといつも考えるようにすること。だからといって遠慮しろというのではない。どれだけたくさんユーザビリティの本を読んだかに関わらず、もっとユーザテストの必要性を主張し、断定的な言い方を控えるようにしよう。
私はほとんどのクライアントに、リンクは青い下線付きの文字列にするよう勧めている。なぜなら彼らのユーザ層は幅広いし、サイトの構造はとても複雑だからだ。普通ウェブに慣れていないユーザは、どのようなグラフィック表現がリンクを意味するのかが理解できず、ナビゲーションについての深刻な問題に突き当たる。
しかし今回のケースでは、ユーザの多くはウェブについてよく知っている人であると予測できる。またサイトの構造は非常にシンプルだ。コンテンツから目を奪う広告もない。ページ数もそれほど多くない。サイト全体はモノクロ調にグリーンで統一されており、下線付きの緑の文字列がリンクであるということを理解できないユーザはたぶんいないだろう。
そのため私はこの例外的なリンク文字列の配色について、特に問題があるとは思わない。
もし心の中に少しでも疑念があるのなら、リンク文字列の色について青の場合と緑の場合で本当に違いがあるのかどうかをテストしてみるように提案するべきだ。その場合は認識速度や操作性だけでなく、この会社についてどのような印象を持つかということも調べてみよう。私の趣味で言えば、たとえそれがユーザビリティを若干向上させるとしても、青い文字列はサイト全体のイメージに調和していないように見える。
(注意:これはリンクを青以外の色にしてもよいという免罪符ではない。熟練したユーザをターゲットにした、ごく小規模なサイトにおいてのみ、場合によっては機能性よりもデザインが優先されることも考えられる、ということだ。)
クライアントとの間に信頼関係ができていないうちは、これは特に注意しなければならない。レポートにある文章:『Nielsen は 1996 年以降、標準的でないリンク色は「深刻な」問題を引き起こす、と分類(classes)しています。』というところは、『Nielsen は 1996 年以降、標準的でないリンク色は「深刻な」問題を引き起こす、と分析(classifies)しています。』と書くべきだろう。文章の間違いは、レポート内容の信頼性を大きく下げてしまうことになるのだ。
Apple 在籍中に一度、外部のユーザビリティコンサルティング会社を使ってみたことがある。すると彼らは上記で問題にしたような口調のレポートを経営陣に直接提出してしまった。Apple で HCI に関わるメンバーは皆とても憤慨し、その怒りが修まるまでの二ヶ月間、一切のデザイン作業をやめてしまった。
プロジェクトの進行課程において、ユーザビリティの専門家とインタラクションデザイナーがうまく協調することはとても重要である。外部のコンサルタントとして依頼された場合でも、またボランティアとして評価をする場合でも、評価される側の気持ちについてできるだけ敏感にならなければいけない。その製品やサービスを実際に改善していくのは彼らなのだから。もし彼らが過去に失敗した経験を持っていた場合、同じような提案をすれば彼らはきっと怒るだろう。そしてあなたに賠償を求めるかもしれない。
逆にもしあなたが製品を良くするための仲間として見られるようになれば、あなたのレポートは熱心に読まれるだろうし、そのアイデアはすぐに取り入れられるだろう。
外の世界に出て経験を積めと Jakob が言ったのは、自分流にすべてやれという意味ではない。優秀なデザインとユーザビリティチームを持つ会社に入るといいだろう。あなたが尊敬できる人やグループの見習いとなって、現実世界のデザインというものを学ぶのである。それがプロフェッショナルになるための方法だ。
コメントがあれば、Tog まで送ってくれ。
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